【イタリア語文法#5】冠詞の使い方

イタリア語の名詞は、常に冠詞とともに使われるのが基本です。
特に定冠詞は、「その本」「その人」のように、話し手・聞き手の間ですでに知られている物や人を指すときに使われます。
このレッスンでは、定冠詞の形と使い分けをマスターし、さらに会話や文章で自然に使える応用力を身につけていきます。
1. 定冠詞のルールと構成
イタリア語の定冠詞は、名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)に応じて形が変化します
また、名詞の最初の音(子音か母音か、特定の子音群か)によっても定冠詞の形が決まります。
定冠詞一覧表
性・数 | 定冠詞 | 主な使用条件 | 例 |
---|---|---|---|
男性・単数 | il | 一般的な子音で始まる語 | il libro(その本) |
男性・単数 | lo | s+子音, z, ps, gn, x などで始まる語 | lo studente(その学生) |
男性・単数 | l’ | 母音で始まる語 | l’amico(その友人) |
男性・複数 | i | il に対応(一般的な子音) | i libri(それらの本) |
男性・複数 | gli | lo / l’ に対応(特殊音・母音) | gli studenti(それらの学生) |
女性・単数 | la | 子音で始まる語 | la ragazza(その少女) |
女性・単数 | l’ | 母音で始まる語 | l’amica(その女友達) |
女性・複数 | le | la / l’ の複数形 | le ragazze(それらの少女たち) |
2. 例文と解説
① Il libro è sul tavolo.(その本は机の上にある。
libro は男性・単数で、子音ではじまるため il を使用。冠詞によって「特定の本」であることが示されています。
② Lo zaino è pesante.(そのリュックは重い)
zaino は男性・単数で、zではじまる名詞のため lo を使用(zは特殊な子音)。è pesante で「重い」という状態を表します。
③ L’amico lavora a Roma.(その友人はローマで働いている)
amico は男性・単数・母音(a)ではじまる名詞。母音の連続を避けるため、il → l’ に省略されます。ここでは定冠詞がつくことで「話題に出た友人」であることを示しています。
④ I libri sono interessanti.(それらの本はおもしろい)
libri は libro の複数形。il → i に変化。複数形でも冠詞を省略しないのがイタリア語の特徴です。sono interessanti は複数主語に対応して、形容詞も複数形で一致しています。。
⑤ La casa è molto grande.(その家はとても大きい)
casa は女性・単数・子音始まりの名詞。定冠詞は la を使用。形容詞 grande は女性単数に一致します。冠詞があることで、漠然とした「家」ではなく「その家」と特定されます。
⑥ L’amica abita vicino.(女友達は近くに住んでいる)
amica は女性・単数・母音(a)始まり → la → l’ に省略。男性形 amico と形が似ていますが、語尾 -a が女性であることを示します。
⑦ Le ragazze studiano francese.(少女たちはフランス語を学んでいる)
ragazze は ragazza の複数形 → la → le に変化。女性複数形の定冠詞は常に le です。
3. 定冠詞の基本的な意味と使い方
定冠詞は話し手・聞き手のどちらにも認識されている名詞に使われます。
日本語の「その」「あの」に近い役割です。
- Ho letto il libro di cui parlavi. →(君が話していた)その本を読んだ。
- La macchina è nuova. →(すでに話題に出ている)その車は新しい。
また、「一般的な物全体」を指すときにも定冠詞が使われます。
- Il vino rosso è più corposo. → 赤ワイン(という種類全体)はよりコクがある。
4. lo / gli の使い分け(特殊子音に注意)
lo は、男性・単数名詞に使われる定冠詞で、語頭が特定の子音ではじまる場合に使います。
以下の音ではじまる男性単数名詞の前には、定冠詞は「il」ではなく「lo」を使います。
発音のパターン | 説明 | 例 |
---|---|---|
s + 子音 | 「s」のあとに別の子音が続く | lo studente(学生) |
z | 語頭が z の単語 | lo zaino(リュック) |
gn | [ɲ] の音(に近い発音) | lo gnomo(ノーム) |
ps | 語頭が ps で始まる | lo psicologo(心理学者) |
x | 語頭が x の音 | lo xilofono(木琴) |
さらに、「gli」は lo または l’ に対応する複数形で、主に以下のケースで使います。
単数形 | 複数形 | 説明 |
---|---|---|
lo studente | gli studenti | s+子音で始まる語 |
lo psicologo | gli psicologi | psで始まる語 |
l’amico | gli amici | 母音始まりの語(l’ の複数) |
lo gnomo | gli gnomi | gn で始まる語 |
l’uomo | gli uomini | 「l’」の複数形で「uomo(男)」の複数形 |
5. まとめ
- 定冠詞は「話し手・聞き手が共通認識している名詞」につける。
- 名詞の性(男性・女性)と数(単数・複数)、そして語頭の音によって冠詞の形が変化する。
- 特殊な子音(s+子音, z など)では lo / gli を使う。